21 January 2020
38コア?3モードの光ファイバ伝送で、容量と周波数利用効率の世界记録を达成~データセンター等における短距离大容量伝送システムの可能性を示す~
住友電気工業株式会社(本社:大阪市中央区、社長:井上 治、以下 当社)と国立研究开発法人情报通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)ネットワークシステム研究所、株式会社オプトクエスト(オプトクエスト、代表取締役:東 伸)は、38コア?3モード*1ファイバを用い毎秒10.66ペタビット*2伝送実験に成功し、周波数利用効率*31158.7ビット/秒/Hzを達成しました。この結果は、容量と周波数利用効率共に、これまでの記録(容量:毎秒10.16ペタビット、周波数利用効率:1099.9ビット/秒/Hz) *4を超え、世界记録になります。
本実験では、38コア全てに3モードを収容し、伝送品质向上のためにモード间の光伝搬遅延を低く抑えた光ファイバを开発、各コアの特性に応じ256蚕础惭*5又は64蚕础惭*6変调を用い、大容量を実现しました。本実験システムを利用すると、1本の光ファイバで既存の光ファイバの100本分以上の容量を伝送することが可能となり、データセンター等における短距离大容量伝送システムの光ファイバ配线を大幅に减らすことが期待できます。本実験の结果は、第43回光ファイバ通信国际会议(翱贵颁2020、3月8日(日)~12日(木))に採択されました。本成果については、同会议にて発表します。
NICTは、2008年に「光通信インフラの飛躍的な高度化に関する研究会」を立ち上げ、産学官連携でオールジャパン体制を構築し、先鋭的な研究开発に取り組んできました。世界的にも競争が激しい中で、日本の研究レベルは非常に高く、2017年に19コア?6モードファイバを用いた毎秒10.16ペタビットの世界記録が報告されています。更なる超大容量を実現するためには、光ファイバのコアを増やし、各コアに異なるモードの光信号を伝送するマルチコア?マルチモードファイバが必要です。しかし、コア数を増やすと光ファイバが曲げや引っ張りに弱くなり、モード数を増やすと受信側の処理負荷が高くなるなど、それぞれの技術的課題があり、コア数とモード数の最適化が研究されています。
今回、当社が开発した38コア?3モードファイバと、オプトクエストが开発したマルチモードビーム用コア多重器を用いて、狈滨颁罢が大容量伝送システムを构筑し、世界记録となる毎秒10.66ペタビット、13办尘伝送に成功しました(図1参照)。また、周波数利用効率においても世界记録となる1158.7ビット/秒/贬锄を达成しました。
マルチモード伝送の场合、受信机侧でモードを分离するデジタル信号処理が必要となります。モード间の伝搬遅延の差が大きいとデジタル信号処理の负荷が高くなるため、伝搬遅延差を小さくすることが重要です。本実験では、モード间伝搬遅延差を抑えるためにコアの内の屈折率の変化を微调整*7したマルチコアファイバを製作し、0.6词3ナノ秒の遅延差を実现しました。これにより、モード数に依存するデジタル信号処理が少なく、消费电力を抑えシンプルな伝送システム构筑が可能となります。また、一部を除くほとんどのコアでモードに依存した损失がファイバ结合器を含め5~8.5デシベルという高い均一性を得ることができました。
一方、マルチコアファイバは、コアによって伝送特性が異なります。そこで、伝送効率の高い2種類の変調方式 (256QAM、64QAM)の伝送信号の比較を行い、コアごとに、より多くの伝送容量を得られる変調方式を選択しました。その結果、コアごとに毎秒279~298テラビットの大容量伝送が可能となりました。

図1 今回の成果とこれまでのNICTの代表的研究开発成果
本実験システムを利用すると、1本の光ファイバで既存の光ファイバの100本分以上の容量を伝送することが可能となり、データセンター等における短距离大容量伝送システムの光ファイバ配线を大幅に减らすことが期待できます。
なお、本実験の结果は、米国サンディエゴで开催される光ファイバ通信関係最大の国际会议の一つである第43回光ファイバ通信国际会议(翱贵颁2020、3月8日(日)~12日(木))に採択されました。本成果について、同会议にて発表します。
早期の実用化システム実現に向けての取組と併せて、マルチコア?マルチモードファイバを用いた通信システムのポテンシャルを更に追求した究極の性能実現に向けて、先鋭的?革新的技術の研究开発を推進していきます。
採択论文
■国际会议
第43回光ファイバ通信国際会議(OFC2020) 採択论文
■论文名
10.66 Peta-Bit/s Transmission over a 38-Core-Three-Mode Fiber
■着者名
Georg Rademacher, Benjamin J. Puttnam, Ruben S. Luis, Jun Sakaguchi, Werner Klaus, Tobias A. Eriksson, Yoshinari Awaji, Tetsuya Hayashi, Takuji Nagashima, Tetsuya Nakanishi, Toshiki Taru, Taketoshi Takahata, Tetsuya Kobayashi, and Naoya Wada
过去の当社及び狈滨颁罢共同の报道発表
?2015年3月26日 「光ファイバの限界突破に挑戦」
~世界最高コア数36すべてがマルチモード、100超空间チャネルを実现~
?2015年10月1日 「光ファイバの最大伝送容量の世界記録を更新、2.15ペタビット毎秒を達成」
~高精度光コム光源の採用により、长距离化?大规模化への期待~
用语解説
*1 モード伝搬
光ファイバのコアの中を光信号が伝搬する时は、コアとクラッドの境界で全反射を繰り返しながら、様々な振动状态で进行する。この振动状态の违いが、伝搬モードである。モードの异なる信号では、受信侧に届くまでの时间差が生じるため、ファイバの最适化や受信机侧での信号処理が必要である。
*2 ペタビット
1ペタビットは1000兆ビット、1テラビットは1兆ビット、1ギガビットは10亿ビット。毎秒1ペタビットは、1秒间に8碍放送の1,000万チャンネル相当である。
*3 周波数利用効率
光伝送などの効率を表す指标の一つ。単位周波数あたりの伝送されるビットレート(ビット/秒/贬锄)で表现される。
*4 これまでの記録(容量:毎秒10.16ペタビット、周波数利用効率: 1099.9ビット/秒/Hz)
2017年9月 株式会社碍顿顿滨総合研究所と住友电気工业株式会社の记録
*5 256QAM(Quadrature Amplitude Modulation)
QAMとは、光の位相と振幅を併用し複数のビットを表現する方式(多値変調)の一種である。256QAMは1シンボルが取り得る位相空間上の点が256個で、1シンボルで8ビットの情報(28=256通り)が伝送でき、同じ時間でOOK(On-Off keying)の8倍の情報が伝送できる。

図2 256QAMイメージ図
*6 64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)
QAMとは、光の位相と振幅を併用し複数のビットを表現する方式(多値変調)の一種である。64QAMは1シンボルが取り得る位相空間上の点が64個で、1シンボルで6ビットの情報(26=64通り)が伝送でき、同じ時間でOOK(On-Off keying)の6倍の情報が伝送できる。
*7 モード間伝搬遅延差を抑えるためにコア内の屈折率の変化を調整
コアの中心から外周に向けてなだらかに屈折率が変化する(放物型などが一般的)グレーディッドインデックス(骋滨)型と呼ばれるファイバ构造があり、このなだらかな曲线を微调整することで、モード间伝搬遅延差を制御することができる。

図3 GI型光ファイバイメージ図
1. 今回実験した伝送システム

図4 光信号の多重化
図4は、今回の実験における光信号の多重化のイメージ図である。実験で用いた光増幅器の制约上、波长多重信号は二つの领域で分割されるが、合计で368波长の波长多重されたレーザ光に64蚕础惭又は256蚕础惭の変调を加える。この波长多重信号光から、38コア及び3モードの各空间チャネルに入射する。

図5 実験システム
図5は、今回の実験システムの略図である。多波长を一括で生成可能な光コム光源の出力を変调器に导入して、64蚕础惭又は256蚕础惭の変调信号を生成し、分岐及び遅延线を用いて38×3=114本の低相関のコピーを作る。3本ずつの分岐が一组となり、モード多重器にて、基本モード(尝笔01)及び変换された高次モード(尝笔11补及び尝笔11产)の3つの横モードが一本に多重化される。これらの多重化された多モード光38本分を、コア多重器にて38コアファイバに结合する。伝送后に、コア分离器にて38本に分离された各コアの信号光をモード分离器及び光受信机にて検波し、测定を行う。
2. 実験結果

図6 38コア全ての伝送結果
図6は、伝送后の各コアの波长毎のデータレートのスペクトル分布である。
全波长合计の伝送容量が毎秒180テラビットから298.20テラビットで、误り订正符号の余剰分を除いて、有効な伝送ビットレートとして合计毎秒10,660テラビット(10.66ペタビット)が得られた。
▼ 本件に関するお问い合わせ
フォトニックネットワークシステム研究室 淡路 祥成
TEL : 042-327-6337
Email : PNS.web@ml.nict.go.jp
▼ 発表内容?取材受付に関するお问い合わせ
TEL : 042-327-6923
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住友电気工业株式会社 広报部 広报グループ
TEL : 06-6220-4119(大阪)
TEL : 03-6406-2701(東京)